活動報告
2024.02.05
住まいを失った若者向けのシェアハウス、立ち上げから3年間の軌跡 〜代表荒井が振り返る〜 前編
それは、深夜の若者からの電話で始まった
夜24時すぎ、関わっていた一人の若者から突然電話がありました。
「今からお店(ホスト@八王子)に来れません?」
そう言われ、”いや電車ないし”と思いながら行けないという返事をすると、彼は「今日お客さんが来ないとお店をクビになり、寮も追い出される」と話していました。
2020年6月ごろの出来事です。
当時は、コロナの緊急事態宣言が発令され、外出自粛をしなければならなかったり、仕事がなくなったり、多くの人がさまざまな影響を受けていました。
たまたま、同じタイミングで、知り合いの不動産屋の方から、「民泊が撤退した物件が空いたけど、サンカクシャで使う?」と言われ、ちょうど住まいがなくなった彼とこの物件がマッチしそうだと思い、なんの財源もなかったのですが、緊急性と必要性を感じ、物件を契約。慌てて、お金を集めました。
本記事は、赤い羽根福祉基金から3年間の助成をいただいて活動してきた中で、どのような葛藤、どのような成果があったのかを生々しくレポートする記事になります。
1人の若者のニーズに応えるために始まったこの取り組みを赤い羽根福祉基金で3年間サポートいただきました。
現在は、シェアハウスが全体で4拠点、個室のシェルター7部屋、合計24部屋住まいを提供しています。
居住支援のスタッフは皆兼業ですが、9名の体制になりました。
これまでに、56名に住まいを提供し、39名が住まいから巣立っていきました。
この3年間、本当にたくさんの事件がありました。
さまざまな背景を抱えた若者が集う場だったので、いろんな事件、事故が起こり、大変なことも多々ありましたが、若者の成長や、変化を作ってきた場所でもありました。
この文章を読んで、若者の居住支援の大変さと、意義を感じてもらえたら嬉しいです。
そして、何よりこの取り組みを3年間支えていただいた赤い羽根福祉基金の皆様に活動と成果の報告ができればと思い、書いています。
立ち上げ期:2020年〜2021年度
先述の通り、1人の若者の声からシェアハウスの運営が始まりました。場所は東京都の駒込。
オリンピックの延期が決まり、民泊が撤退した物件をお借りしたので、ベッドや家具などは一式揃っていました。
最初は、先ほどの元ホストの子が入居。
その後は、元々関わりがあって、実家を出たい、一人暮らしをする準備をしたい、家に居場所がないなどといったニーズでこのシェアハウスに駆け込んでくる若者が集まりました。
4名ほど入居者が集まったタイミングで、みんなでご飯を作って食べたり、住人同士でルールを決めたりと、シェアハウスっぽくなっていきました。
最初は、関わりがあった若者ばかりだったので、みんなで共同生活を楽しむ、そんな楽しげな雰囲気のシェアハウスでした。
一緒に仕事探しをしたり、今後どういう人生を歩みたいかを話し合ったり、仕事を頑張っている若者の話を聞いたり、仕事のサポートも行っていました。
居住支援のスタッフも増え、若者にパソコンの使い方をレクチャーする機会を作り、タイピング練習をしたり、ワードやエクセルの使い方を教え、履歴書を作ったり、仕事探しの仕方を教えたりしていました。
その後、噂を聞いた連携する機関の方々から若者をつなげたいという支援依頼が相次ぎました。その頃、住まいの支援をしている団体は今ほど多くなかったので、シェアハウスの存在が知られると、続々と依頼が入ってきました。
定員5名にしていたのですが、”どうしても緊急でこの若者も見てくれないか”という依頼も増え、定員を超えてもいいかと本人に確認して同意が得られたら受け入れをする、そんな状況でした。
支援依頼をもらうということは、どこかの機関が関わってる若者です。なぜサンカクシャに繋げてくるかというと、既存の支援がはまらなかったから。大変な状況の若者ほど既存の支援にはまらないことが多いので、なかなか大変な若者が続々と集まってきたわけです。
友人同士でみんなで和気藹々とやっていたシェアハウスの空気が少しずつ変わっていきました。
まず、自殺未遂。
オーバードーズという、薬を過剰摂取する行為をしている若者がいました。
一度に数十錠飲んでしまい、泡をふいて倒れてしまい、若者から深夜に電話がかかってきて急いで救急車を呼んだこともありました。
1人が不安定になると、それが伝播していきます。
他の若者も死にたいと薬を飲んで運ばれることもありました。
自殺未遂を繰り返す若者、シェアハウスの家具を蹴って足を骨折した若者、歯が痛いと歯医者に駆け込む若者、何度病院に付き添ったかわかりませんでした。
次に、騒音。定員を超えて受け入れをしているので、どの部屋も相部屋の状態でした。
部屋割りをみんなで考えたので、それぞれの部屋で仲良い若者が生活をしていました。
仲が良いことはいいのですが、盛り上がってしまい、深夜に爆音を流したり、騒いだりで、近隣からのクレームがきて、警察が何度もきて、厳重注意をされました。
病院での取り調べや騒音のことなど、この頃から私の個人ケータイに警察から直接電話がかかってくるようになります。最悪。
お金がない若者も多かったので、日払いのバイトを調べ、朝起こしてバイトに見送ったり、
バイトが決まって喜んでいる若者にホッとしたと思いきや、何回も連続で初月の給料をもらう前に辞めてしまい、一向に給料が入ってこない若者がいたり、
明日引っ越しします! と連絡をもらったと思いきや、朝4時に大量の荷物を大音量で運んできたやつ、
朝起きてから何もやることがなさすぎて、永遠に階段の上り下りを繰り返しみんなから嫌われたやつ、
知らない間に道端で仲良くなった女の子をシェアハウスに連れ込んだやつ、
人の食べかけの冷蔵庫に入ってるご飯を食べてしまうやつ、
親を殺しにいくと深夜にシェアハウスを飛び出し暴れるやつ、
本当にいろんな背景を抱える若者たちが集っていました。
この頃は、週3日程度稼働のスタッフと私くらいの体制しかありませんでした。
助成金のテーマが「就労支援つきシェアハウス」だったので、就労支援をと思っていたのですが、就労に至る手前のところからの支援が必要だということを痛感しました。
多くの若者が、これまでの家庭環境で受けた傷を癒すこと、休むことから始めないとなりませんでした。
本当にたくさんのトラブルがありましたが、その1つ1つに、彼らのSOSのようなものを感じていました。それらを受け止めて、”この場から一緒に今後の人生を考える。”そんな関わりが必要だと感じた1年目の取り組みでした。
住まいを失った若者向けのシェアハウス、立ち上げから3年間の軌跡 〜代表荒井が振り返る〜 後編へ
この活動は、社会福祉法人中央共同募金会様の「赤い羽根福祉基金」による助成を受けています。
助成団体様ならびに寄付者の皆様に厚くお礼申し上げます。
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ライター
荒井 佑介
代表理事
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