特集・企画
2024.03.15
若者インタビュー #2:暴力はやめた。今の目標は10年後に大地さん(サンカクシャスタッフ)を超えること 〜父親からのD Vで児童養護施設を経てサンカクシャへ
サンカクシャは、“親や身近な大人を頼れない15~25歳くらいの若者”を支援の対象としていますが、集まってくる若者は多様なバックグラウンドを持っています。そのため彼ら彼女らを短い言葉で言い表すことはできないのですが、“若者支援”と聞いたときにどんな若者が支援を必要としているのかイメージし難いという声を聞きます。
一見すると、“普通”の若者と変わらず、声を掛ければ明るく話してくれる若者たちでも、サンカクシャにつながるまで、そしてつながってからも、一人ひとりの葛藤や生きづらさのストーリーがあります。
このシリーズでは、そんな若者が語ってくれたそれぞれの物語を紹介します。
殴られることが日常だった
子供の頃の家庭環境について教えて下さい。
両親と妹2人の5人家族でした。生まれは埼玉で、その後、東京に引っ越しました。
どんな家庭でしたか?
最悪ですね。しょっちゅう父親から殴られて。直接的に何をしたからって言うよりも、父親の気分で気に入らないと殴られる。自分の思い通りにならないのがすごく嫌いな人なんですよ。自分がこう育ってほしいとかって思ってるのと違うとイラってくるから殴っちゃうような感じでした。
それは何歳ぐらいの頃からですか?
多分小1の頃にはもう殴られてました。
当時、先生や他の大人に相談したりした?殴られるのが当たり前だと思っていたから、“あっ、怒られたんだ”ぐらいの感覚で。痛かったけど、特に深く考えてなかったです。
それがもう日常になってたみたいな感じ?
そうですね。
小学校には普通に通っていた?
はい。友達もいて校庭でサッカーとかしてました。放課後もみんなで遊んでいました。
中学時代はどうでした?
部活でバスケを一生懸命やってました。その中学は区内では強かったんじゃないかな。自分もレギュラーでした。
中学の途中からいろいろあって児童相談所に入って、そこから他県の養護施設に行きました。そこで地元の中学に通いました。児相も含めると2年弱の間そこにいました。
それから高校に進学?
高校は実家から通いました。全日制と定時制が合わさった高校で、スポーツが好きなので、部活でテニスをやってました。授業には出ないで部活をしに学校に行っていました。強くて定時制の大会で入賞したりしました。
高2になる前に家を出て、母親の実家でおばあちゃんと2人で暮らしていました。素行が悪かったので、高校3年の夏に退学になりました。まったく次のことは考えてなくてコンビニとかのアルバイトしかしてなかったです。
いつもイライラしていた
サンカクシャに繋がったきっかけは?
小学校の時にPTAをやっていた人が、うちの家の状況を知っていたので、俺が家に帰っていないのを心配して、区役所に相談してくれたんです。それで区役所の職員の人から”サンカクシャにシェアハウスがあるから行ってみて”と言われました。住むところがなかったし、同年代の人が住んでると聞いたからいいかなと思って駒込のシェアハウスに行ったら、荒井さんが外で「やあ」と待っていました。
その時の荒井さんの印象は?
めっちゃニヤニヤしてる(笑)。
大人や周りに対してどんな風に思っていましたか?
大人の種類によると思うんですけど、めっちゃ嫌いでした。今、振り返ると自分が本当に“クソガキ”みたいな考えしか持ってなかったから、全員をなめてるみたいな感じでした。まともに会話なんかできない感じでしたね。
初対面の若者に対しても目が合っただけで「お前なめてんのか」とか言っちゃうみたいなのがありましたね。どうしてそうなっちゃってたのか自分でもわかんないけど、その頃は今に比べてプライドが高くて、自分の考えを否定してくる奴はみんな敵みたいに思っていました。
いつも説明できない何かにイライラしてた。家ないし金ないしみたいな状況だったから、追われてるし逃げられないしみたいな、そういう見えないものからの何かがあったんじゃないですかね。
シェアハウスに住み始めてからは?
ぶっちゃけ最初は何も変わらなかったですよ。他の住人ともいろいろあって。俺が住人と揉めるというより、俺がきっかけで違う奴らが揉めることが多かったですね。それでも今は、その頃よりだいぶマシになりました。
1年くらいで駒込のシェアハウスが無くなったので、今はアパートを借りて1人で住んでいます。
過去を振り返って変わったと言ってたけど、それはどんな風に変わったのかな?
手を出さなくなりました。シェアハウスにいた頃は、物理攻撃で脅しをかけてたんですよ。それがちょっとワンランクアップして、“言葉による脅迫”になったというか(笑)。
でも“脅迫”なんだ。
うーん、俺はぜんぜん“詰めてる”つもりはないんですけど、周りから見たらそういうふうに受け取られてしまうこともあって。
暴力をやめようと思うきっかけは何があったのかな?
シェアハウスにいる時に“力で解決するのはよくないよね”ってずっと荒井さんやもう1人のスタッフの人から言われ続けて。正直“なんでっ?”て思ってました。その時は変わらなかったけど、だんだんとかな。
シェアハウスで暴力がダメってなったんですよ。それで部屋に引きこもりました。“暴力”か“引きこもる”か(笑)。引きこもって朝から晩までゲームをしていました。サンカクシャの共用のゲームを借りて。それを回収されそうになってブチギレました(笑)。赤ちゃんがオモチャを取り上げられて泣いてるような状態でした。
高校は別の学校に編入したんだけど、行かないから学校の先生から電話がかかって来て。勉強を我慢してするっていうことができなくて。50分間机に座って勉強するのが苦痛。興味のないこと学ぶことができないので、その高校も辞めることにしました。
お金を稼げるようになりたい
サンカクキチ(居場所)に来るようになったのはいつから?
以前は居場所に来れるような人間じゃなかったです(笑)。昨年の9月か10月ぐらいからキチに来るようになったんですよ。荒井さんから誘われてキャンプに行ったり一緒に愛媛に行ったりして、その前後からキチにも来るようになりました。
今はどんな毎日を過ごしてますか?
友達と遊びに行ったり、友達の家に行ったりが多いですね。サンカクシャの友達とはプライベートでは合ってないです。
サンカクシャについてどう思っていますか?
荒井さんには今後いろんな人を紹介してもらえると思うのでありがたいです。
大地さん(社会参画担当スタッフの加藤大地。兼業で複数の仕事に従事)くらいお金を稼ぎたいっていう目標があるので、10年後、今の大地さんの歳になる頃には大地さんの収入を超えたいです。
これからやってみたいことは?
お金を稼ぎたいです。そのための道を荒井さんに作ってもらってます。道路の土を整えてもらうっていう感じかな。今は、膝下まで泥と水でべちゃべちゃなので、長靴で歩けるかなぐらいに整えてもらって、自分で歩いていこうかなと。そして大地さんみたいになりたい。目標なんですよ。そこだけは書いておいて下さい。目標を失ったら何もできなくなると思うので、大地さんには事故にあったりせずに頑張ってもらいたいです(笑)。
若者インタビュー #1:「サンカクシャと一緒に仕事をしたい 〜地方から上京、シェアハウスから一人暮らしで行政書士の資格を取得〜」の記事はこちら
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ライター
水上みさ
広報/ファンドレイジング
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2024.03.15