活動報告
2024.04.29
やっとひとりになれたけど、ひとりじゃない〜短期滞在型シェルター運営から1年を振り返って〜
サンカクシャでは23年度から住まいを失った若者のための短期滞在型のシェルター「サンカクシェルター」の提供を開始しました。
事業の背景
サンカクシャでは、21年度から、家を失った若者のためのシェアハウス「サンカクハウス」の運営をスタート。インターネットや行政の紹介等を通じて繋がった若者に、安心できる住居を提供し、自分で部屋を借りて自立できるよう支援を行っています。一拠点定員6人から開始した居住支援は、若者からの相談が絶えることなく、拠点・定員を増やしても待機者が出る状況が続きました。
一方、それまでのシェアハウス運営の経験を通じて、他者とのコミュニケーションを苦手とするため共同生活に適さない若者や、一時的な居住環境確保のニーズなど、シェアハウスでは対応が難しいケースも多いことがわかりました。
そこで、23年度から、団体として賃貸アパートを契約し、家具や生活用品を備えた短期滞在型のシェルター「サンカクシェルター」として運営を開始しました。
シェアハウスとシェルターの違い
スタッフが相談に応じながら、生活環境を整え、必要に応じてサンカクシャの他の支援や公的支援に繋げ、自力で家を借りて生活できるようになるまで伴走型の支援を提供する点は同じです。
シェアハウスは個室(プライベートスペース)とキッチン・お風呂などの共有スペースがあり、共同生活を送ります。スタッフが週1〜2回程度シェアハウスを訪問し、食事作りや洗剤やトイレットペーパー等の生活用品の補充を行いますが、共有スペースについては掃除当番を持ち回りにするなど、シェアハウスでの生活の大半を他の入居者と過ごすことになります。1年〜1年半を卒業(退去)の目安としています。
シェルターでは単身者用アパートにて生活を送ります。居住する若者のプライバシーを確保しながらも、孤独に陥ることを防ぐため、居場所(サンカクキチ)から徒歩圏内にあります。シェルター利用者は、サンカクキチ開放中(毎週水・木・土 14:00〜21:00)はいつでも居場所を利用し、スタッフや他の利用者と交流したり、夕食を共にすることができます。卒業(退去)の目安は3ヵ月程度。
住まいを失う若者の特徴
23年度の活動を通じて、住まいを失う若者像がより明確になりました。
・家族関係に原因があり、家が安心できる場所ではなく、自らの居場所として位置付けることができない状況などがある。
・料理・洗濯・掃除・金銭管理といった基本的な生活が成り立たず、生活支援が求められている。
特にシェルターでは、洗濯機の使い方、ゴミの分別、料理の作り方などのサポートに注力しました。
やっとひとりになれたけど、ひとりじゃない
シェルター利用の中心となるのは、家から離れたい、家を失ってしまった、けれど家を借りられる経済状況にない若者。まずはご本人の問い合わせから面談を行い、生活保護申請の同行にいきます。身分証や携帯も失っていることが多く、生活の立て直しのために様々な手続きを一緒に行います。
また、家にいる間に緊張状態が続いていた若者が、やっと一人になれる空間を手にしたことで一気に疲労が出てくる場面も多く見られました。
休めるリビングの一つとしてサンカクキチを利用する若者もいれば、スタッフと二人で外出する時間を設ける若者もいます。キチはさまざまな人が絶えず出入りする場所のため、集団の中へ入っていくことに抵抗感のある人には個別に関わり方を変える工夫をしています。
関係性ができてきた後に、スタッフと一緒ならキチに来ること、他の若者と一緒におでかけにいくことができるようになった若者もいました。
23年度を振り返って
相談にくる若者たちは安全な住まいを提供するだけでは不十分で、心理的ケアや生活立て直しといった伴走支援こそが重要であると言えます。
サンカクシャでは支援の個別性を重視し、つながった若者一人一人の状況にあわせて定期的な相談や面談、生活サポートを行い、意欲喚起につながるレクリエーション活動への参加も促しながら、所属欲求を満たせるようなかかわりを意識して取り組みました。
また、シェルターを利用する若者が、居場所(サンカクキチ)を利用することで、単身住まいの若者の寂しさの払拭に一定の効果があると考えています。
シェルターを出ることそのものではなく、本人なりの見通しが立ったうえで次のステップに進むことが自立支援の目的。サンカクシャにいること自体が本人のペースに合わせた移行期とも捉えられます。
引き続き、行政の制度や連携している精神科への紹介など、就労を支える企業や地域の大人との連携体制を充実させていきたいと考えています。
実践報告書を発行
シェルターの支援等に関する23年度の取り組みについての「住まいを失う若者への新たな取り組みに関する実践報告書」を発行しました。ご関心のある方はダウンロードができますのでぜひご覧ください。
この活動は、独立行政法人福祉医療機構様の「令和4年度補正予算事業」により実施しています。助成団体様ならびに寄付者の皆様に厚くお礼申し上げます。
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