親を頼れず住まいを失った18歳の若者が、職場でMVPを獲得するまでの話

「職場でMVP獲得出来ました！」
一年前には明日の寝泊まり出来る場所すら無かった若者からこんな言葉を貰えるなんて。
とても嬉しく、皆さんに共有したいと思ったので記事にさせて頂きました。

サンカクシャでは、居住支援の一つとして、シェアハウスを運営しています。
シェアハウスでは、親から虐待を受けている、家に居場所が無い、ネットカフェで生活しているなど、様々な背景を抱えている若者達が入居して、次のステップに進めるようにサポートしています。

A君がサンカクシャにつながった経緯

1年前にサンカクシャに繋がった18歳の男の子A君（以下A君）。
高校時代の彼の偏差値は65。
高校を卒業して、希望した地方の大学に進み、実家を離れました。
しかし、希望に満ちていたはずの大学生活で、理不尽な人間関係に巻き込まれてしまいます。
体調を崩してしまったA君は、学校を休学して、実家に戻ろうと両親に連絡をしました。

しかし、頼るつもりだった家族からは「自分でなんとかしろ」と残酷な対応をされてしまったのです。
両親は、「高校を卒業したら後は自己責任」という考えを持っていて、A君が家に戻るのを拒みました。行き場を無くしたA君は、自らネットで支援団体を探して、その後すぐにサンカクシャに繋がりました。

A君との初対面。とてもしっかりしていて、賢そうな子でした。
家族に頼れないことや、コミュニケーションを上手く取るのに苦手意識があることを打ち明けてくれ、安心して住める家に住みたいと言っていました。
シェアハウスを紹介すると、A君は直ぐに入居を決めて、翌日入居。

A君のシェアハウスでの様子

最初は緊張してあまり他の入居者と関わらなかったものの、月日を重ねるごとにシェアハウスの他の若者と交流を深めていきました。

同時期に、同じシェアハウスに住んでいる若者で自炊が好きな子がいました。
自炊を全くしてこなかったA君はその若者から影響を受けて、自炊を始めます。近くのスーパーで値引きの弁当を買っていたA君はいつしか様々な料理を作り始めました。

安心と他者への信頼、自炊の力をシェアハウスで獲得したA君は休学していた大学を辞めて、仕事を探しました。
持ち前の学力に加え、シェアハウスで他の若者と交流を深めていたA君はコミュニケーションを取ることの苦手意識も無くなり、希望するベンチャー企業にフルタイム勤務のアルバイトとして採用されました。

「一人暮らしします！」

シェアハウスに住みながら、A君は会社でも一生懸命に働き、切り崩していた貯金も、みるみる貯まっていきました。
「一人暮らしします！」
シェアハウスに住んで半年でA君は一人暮らしすることを決めました。
それは、決してシェアハウスが嫌になったわけではなく、今後の自分自身の成長のためにA君自ら決めたことだったのです。

一緒に内見に同行。希望する物件に巡り合い、そして、一緒に引っ越し作業。
引っ越しには苦楽を共にしたシェアハウスの子達も手伝ってくれ、彼を快く送り出してくれました。

「何かあったらいつでも連絡してね！」シェアハウスを退去するA君にかけた最後の言葉。
彼は「勿論です！」と言っていました。

「会社でMVPを獲得して賞金を頂いたので、ご飯奢らせてください！」

それから3か月後。
A君から一通のＬＩＮＥが。
「会社でMVPを獲得して賞金を頂いたので、ご飯奢らせてください！」
すぐにA君と会う約束を取り交わして、その数日後、約3か月ぶりに彼と会いました。良い表情をしていて、以前よりも大人びていました。
「職場の人でこんな人がいてー」
「シェアハウスで皆でトランプした時にー」
最近の近況やシェアハウス時代の他愛のない話を沢山しました。彼はシェアハウスで出会った住人達と色々な話をしたことが、今も大切な想い出になっているとのことでした。

高い目標。でも彼ならこの目標も容易に達成出来る気がします。

お店を出た後、お礼をして、最後にこの言葉をかけました。
「何かあったらいつでも連絡してね！」
彼は即答、
「勿論です！」