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特集・企画

2024.06.28

「大切な人の、大切な存在を、大切にする」から始まった回復への道のり【若者×まちの大人×スタッフ座談会】

サンカクシャの居場所スペース「サンカクキチ」から徒歩5分のところに、「滝野川フレイムス」という菓子製造許可付き古民家レンタルスペースがあります。

滝野川フレイムスとはつながりが深く、これまで、若者がコーヒーを淹れ、お客様に提供するお仕事体験(通称:サンカククエスト)の機会をいただくなど、様々な形で若者を応援してくれています。

滝野川フレイムスには、ガレージを改装したコーヒースタンドと、茶の間があります。

今回は茶の間をお借りして、滝野川フレイムス管理人の河田彩さん(以下、彩さん)と、若者(以下、ひなちゃん ※仮名)、スタッフ宮本の座談会を行いました。

サンカクシャを知ったきっかけは「友達の職場」

―――まず最初に、サンカクシャと出会ったきっかけを教えてください。

彩さん)私は新卒から10年間、保育園の管理栄養士をしていて。大好きな仕事だったけれど、新しいことにチャレンジしようと思って、辞めることにしました。その後、池袋と小豆島の二拠点生活をし、2023年に滝野川フレイムスをオープンしました。

彩さん)実は、最初から、サンカクシャを知っていたわけではないんです。二拠点生活をしながら、豊島区で活動していた頃、緑さん(宮本)とはまー(サンカクシャスタッフ早川)に出会って。話しているうちに、緑さんはサンカクシャという団体で、若者を応援していると知ったんです。友達になったのが先で、後からサンカクシャを知った感覚かな。

「頑張りを見ていたよ」まちの中での初対面

宮本)ひなちゃんがサンカクシャと出会ったのは、いつ頃ですか?

ひなちゃん)5年くらい前かな。ほかのNPOの人から、サンカクシャを教えてもらって。当時、18歳を超えていて、そのNPOの対象年齢を過ぎてしまっていて、サンカクシャを紹介されたのがはじまりです。

彩さん)緑さんから「若者」という言葉を聞いてから、初めて出会った子がひなちゃんなんだよね。

――彩さんとひなちゃんが出会ったきっかけを聞いてもいいですか?

彩さん)はまーが、イベントでナポリタン屋さんをやっていたときに、お手伝いに来ていたのが、ひなちゃんでした。

――その時の第一印象を覚えていたら、教えてください。

彩さん)なんだろう。よわよわしいって感じだった(笑)

ひなちゃん)あの時は、本当にいろいろあって、疲れ切ってましたね。

彩さん)後日、滝野川フレイムスに、遊びに来てくれたんだよね。ひとりでコーヒーを飲みに来てくれて。

その時に、「ひなちゃんだよね?」と声をかけたら、すごく驚いていて。「え、私の名前、わかるの?」って。

私はその時、「ナポリタン屋さんのとき、ちゃんと名前名乗ってたし、頑張ってたよね。見てたよ」って声をかけたんです。そこから少しずつ仲良くなっていったかな。

まちの中の居場所での回復の日々

彩さん)それからは、ふらっと遊びに来てくれては、コーヒースタンドの奥の席で座ってゆったりして。そんな日々を積み重ねていったかな。

彩さん)いつしか、コーヒースタンドに来るお客さんと話したりとか、忙しいときには、私のお手伝いをしてくれたりするようになったんです。

当時は、相変わらず、よわよわしかったけどね(笑)

ひなちゃん)今思い返してみると、当時はリセット期間だったんだと思う。

家族といろいろあって、家を出た直後で。当時は、引っ越しもして、仕事も始めたばっかりで、ぜんぶぜんぶ大変で。体調も崩しちゃうし、精神的にもかなり落ちていました。

そんな私には、ただぼーっとする時間が必要だったんだと思う。彩さんのコーヒースタンドで過ごした日々は、自分が回復するために必要な時間だったように感じています。

大切な人の、大切な存在を、大切にする

彩さん)私は、「回復できるように支援しよう」とは、全然思っていなくて。「何かあれば言ってね」と声をかけたり、いろんな大人に出会える機会をたくさん作ったりしていました。豊島区での活動があれば、ひなちゃんを連れていくようにしていましたね。

宮本)次々と新しい大人に出会ってみてどうだった?

ひなちゃん)今までの人生、本当にいろいろあって。大人から助けてもらってないわけではないけど、追いつめられる前に手を差し伸べてもらえてたら、もっと違う人生だっただろうな、って思ってた。

彩さんと一緒にいろいろな大人に会うのは、全然嫌じゃなくて。むしろ、何かしていないと、ネガティブなことで頭がいっぱいになってしまいそうだったんです。

結果として、たくさんの大人に優しくされて。実は私、彩さんが紹介してくれた大人のところで、働いているんです。働く場所も含めて、いろいろなつながりができた感覚かな。

彩さん)あの時、「優しくされて、どうしたらいいのかわかりません」って、泣きながら笑ってたよね。感情が壊れちゃうくらいに、頑張ってきたんだと思った。

彩さん)滝野川フレイムスは、福祉施設ではないし、みんなを助けたいとは思っていなくて。

私にとって、緑さんやはまー(いずれもサンカクシャスタッフ)は大切な存在で。ひなちゃんは、大切な人の大切な存在だから、私も大切にしようって決めたんです。

以前、ひなちゃんから「なんでこんなに、よくしてくれるんですか?」って聞かれたことがあって。「友達があなたのことを大切にしているから、私も大切にしてるんだよ」って答えたことを今でも覚えています。

宮本)それを聞いて、私も嬉しいな。

ひとりの人としてかかわれる、はじめての大人

――ひなちゃんにとって、彩さんはどんな存在ですか?

ひなちゃん)家族でも、支援者でもない大人かな。ひとりの人としてかかわれる、はじめての大人。良い先輩って感じです。

彩さん)今でも週1では会ってるよね。

――ひなちゃんは、彩さんみたいなまちの大人と、スタッフとの違いを感じることはありますか?

彩さん)プライベートで緑さんに会うと、申し訳なさそうにしてたよね。仕事じゃないのに、ごめんって。私に対しては言わないし、その違いじゃないかな。

ひなちゃん)確かに、スタッフには申し訳なく思うことがあります。どこまで仕事(若者への応援)として、やってもらっていいのかなって。彩さんのようなまちの大人は、何も気にせずに居られますね。

「はたらく」の手前で自信を育む

――彩さんはサンカクシャとご一緒してみて、なにか印象の変化はありますか?

彩さん)若者への解像度が上がったかな。ひなちゃんみたいにお仕事をしている子ばかりではなくて、クッションにうずくまるようにしている子もたくさんいて、その子たちが大多数なんだって学んだ。

――サンカクシャでは、いろいろな若者を応援していて、そのほとんどが親を頼れない若者です。働いた経験が少ない若者や働く自信がない若者も多いです。

サンカクシャでは、そんな若者たちがいきなり一人でアルバイトを始めるのではなく、知り合いと一緒に仕事を体験するプログラム「サンカククエスト」を運営しています。

ひなちゃんはサンカククエストを体験してみて、どう感じましたか?

ひなちゃん)自分ひとりだと体験できないことがたくさんあるので、サンカククエストの存在はありがたかったです。

彩さん)サンカククエストは、働くことのすごく手前のところな気がする。いきなりアルバイトができる子には、サンカククエストは必要なくて。まずは、自信をつけることから始めることが必要な子たちには相性がいいと思う。

宮本)そうだねえ、すぐに就職できるスキルではないかもしれないけど、優しい人とのつながりを感じて、少しずつ社会への不安をなくしてもらいたいなという想いもあるから。彩さんをはじめ、若者を応援したいと思う人たちが周りにいて、すごく助かってます。若者がコーヒー淹れるならと、駆けつけてくれる大人が滝野川フレイムスにもたくさんいて。そんなふうに、みんなが見守ってくれる場所があると、若者も安心してチャレンジできるよね。

(滝野川フレイムスで実施した「サンカクコーヒー」の様子)

アルバイトと仕事体験のはざまの重要性

――サンカククエストに対して、感じている課題はありますか?

ひなちゃん)アルバイトとサンカククエストの中間が必要だなと感じています。ほかの子たちも、アルバイトに挑戦する段階でつまづいている子が多いなという印象です。

ほとんどの子が大学に行っていないし、家の住所がない子だっている。私自身も、何度も家のことで、アルバイト探しにつまづいてしまって。

ひなちゃん)仕事探しの相談のために窓口に行っても、「アルバイト経験がないから、仕事の紹介が難しい」と言われたり、就労支援機関に行っても、心身が疲れ切っているなかで、「毎日通わないといけない」と言われたり。

自力で仕事を探すと、契約書を交わさないような労働環境が良くない環境でしか受け入れてもらえなくて、自分にとっては、すごくハードルが高かったです。

働こうとすると、急にステップが高くなる感じがするんですよね。

宮本)サンカククエストと働くまでの距離が遠いので、それを埋めていくための取り組みが必要だなと感じています。だからこそ、街の人と協力しながら、若者の「働く」を考える機会がこれからもっと重要になるのかな。

※補足:サンカクシャでは、まちの人とつながりながら、仕事のサポートができる新たな拠点「サンカクオフィス」をつくろうと計画しています。
「サンカクオフィス」では、サンカククエストの作業スペースだけでなく、得意な若者が料理をふるまい、みんなで食事ができるキッチン・カフェスペースや、お菓子作りや小説、イラストなど、若者のチャレンジを気軽に形にできる出店スペースなど、様々なはたらくを体現できる場にしていきたいと考えています。
現在は、拠点づくりの準備を進めるため、クラウドファンディングに挑戦しています(クラウドファンディング「親を頼れない若者の支援を街全体で|仕事で社会とつながる新オフィス!」はこちら)。

肩書きがなくても居られる場所へ

――サンカクシャでは、サンカクオフィスなど、様々なチャレンジを予定しているのですが、彩さんは、今後、どのようにサンカクシャとかかわっていきたいですか?

彩さん)滝野川フレイムスは、サンカクキチ(サンカクシャが運営している居場所)のご近所さんなので、サンカクシャとも、もっとコラボレーションしていけるといいなと思っています。

滝野川フレイムスには、今はまちの友達がたくさん来てくれているけれど、最近は、地域のご近所さんも増えてきていて。若者を含めて、「肩書き」がなくても、居られる場所にしたいですね。

宮本)滝野川フレイムスは、サンカクシャでかかわる若者も、スタッフもよく遊びに行っていて。みんなの憩いの場になってるんだよね。茶の間で仕事をしてるスタッフもいるし。

彩さん)ありがとう。私とサンカクシャの距離感は、今もこれからも、変わらないと感じていて。

実は私、オトナリサンって名乗りたくないの(笑)
※オトナリサン・・・ボランティアや寄付者など、若者を応援する大人たちの呼称。

ボランティアっぽくしちゃうと、私がやってることに理由をつけられるみたいで、抵抗感があって。

スタッフが友達だから、友達が働いているサンカクシャを応援するし、友達が大切にしている若者を大切にする。ただそれだけかな。

「友達事」として、応援の輪をつむいでいく

彩さん)私が、ひなちゃんや緑さんを通して、サンカクシャを見ていたのと同じで、滝野川フレイムスのお客さんは、私を通して、サンカクシャを見てるんだよね。

サンカクシャがやっているクラウドファンディングの応援コメントを見ていると、滝野川フレイムスのお客さんも、結構、寄付してくれていて。

私は、その人たちに「応援してください」とは一言も言っていなくて、私が発信したサンカクシャを自分で調べて寄付してくれて、応援の輪が広がってるんですよね。

私が大切にしている相手だから、若者やサンカクシャを応援しようって思ってくれている人がたくさんいる。オトナリサンさんを名乗らずとも、こうやって「友達事」ととらえてくれる人がたくさんいるといいなと思っています。

――友達の輪が広がっていく感じですね。これからも引き続きつながっていきたいです。

ひなちゃん、彩さん、今日はお話を聞かせてくださって、ありがとうございました!


クラウドファンディング挑戦中!

サンカクシャでは、現在、意欲が回復してきた若者が社会にサンカクできるよう、若者の働きたい!頑張りたい!を後押しし、街の人ともつながれるように、仕事のサポートに特化した拠点「サンカクオフィス」をつくるべく、クラウドファンディングに挑戦しています。

親を頼れない若者の支援を街全体で|仕事で社会とつながる新オフィス!

ぜひ応援をよろしくお願いします!


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ライター

菊川恵

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2024.06.28