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特集・企画

2024.11.21

[特集]若者の”不安定な居住状態”の問題を考える〜その1:サンカクシャの若者が「ホームレス・ワールドカップ」に出場した背景とは

サンカクシャの若者2名が、今年のホームレス・ワールドカップの日本代表として出場しました。この大会への参加というチャレンジが、2名にとって大きな転機となることを望んでいます。それだけでなく、多くの方に大会の存在を通じて、ホームレス問題への関心を寄せる機会となればと考えています。

本記事ではホームレス・ワールドカップやホームレスの世界基準・実態調査について紹介しつつ、サンカクシャが支援する若者についてご紹介していきます。

ホームレス・ワールドカップとは

ホームレス・ワールドカップは、ホームレスや不安定な住居環境にある人々のためのサッカーであり、ホームレス状態の人が一生に一度だけ選手として参加できるストリートサッカーの世界大会です。

この大会は、スポーツを通じてホームレスの人々に自信と希望を与え、ホームレス問題に対する偏見や無理解を是正することで、「ホームレスの存在しない世界」を目指しています。

2003年に始まったこの大会は、年々参加国が増加し、現在では世界中から多くのチームが参加する国際的なイベントとなっています。

試合形式は、1チーム4人制の特別ルールで行われます。参加資格は、不安定な住居環境等にあるホームレス状態を経験した人が対象ですが、細かな定義は国によって異なります。
今年の大会は、2024年9月21日から28日まで韓国・ソウルの漢陽大学で開催されました。

ホームレスの世界基準と日本の現状

日本と世界のホームレスの定義には大きな違いがあります。

日本で法的(2002年ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法より)に定められている「ホームレス」の定義は、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」に限られています。

しかし、世界基準では不安定な住居環境にある人々も含まれます。たとえばイギリスでは「家があっても経済的な理由で維持できない人」や「友人の家に居候している人」などの人も「ホームレス状態」とされます。これには、ネットカフェ難民や友人宅を転々とする若者なども該当します。

日本におけるホームレスの実態は、路上生活者の数は減少傾向にありますが、不安定な住居環境にある人々を含めると、その数は決して少なくありません。厚生労働省の2024年度調査によると、全国の路上で生活する人の数は2,820人となっています。一方で、安定した住居がない状態でネットカフェ等を利用する人は、都内だけで一晩に4,000人いると推計されています。

調査結果から見えるホームレス問題の実態

株式会社LIFULLとダイバーシティサッカー協会が共同で実施した「ホームレス」に関するイメージ調査では、興味深い結果が明らかになりました。

参照元:https://lifull.com/news/35050/

自身のホームレス状態になる可能性

調査によると、全体の35.1%、約3人に1人が「今後自分がホームレス状態になる可能性がある」と回答しました。特に20代では46.6%と最も高く、約2人に1人がホームレス状態になる可能性があると感じています。この結果は、若い世代の経済的不安定さを反映していると考えられます。

ホームレス状態の人のイメージする居住環境

「ホームレス状態の人」と聞いてイメージする居住環境については、「道路やその他の公共空間」が74.6%と最も多く、次いで「24時間営業の商業施設(ネットカフェ・漫画喫茶・サウナなど)」が56.3%となりました。この結果は、従来のホームレスのイメージが根強い一方で、「ネットカフェ難民」などの新たな形態のホームレス状態も認知されつつあることを示しています。

ホームレス状態に至る原因

ホームレス状態に至った原因としてイメージされるものの1位は「勤務先の倒産や解雇、事業の失敗による失業」で約8割(79.6%)でした。一方で、「働くのが嫌」(65.3%)や「本人が望んだ(望んでいる)」(59.6%)といった自己責任論的な見方も6割を超える結果となりました。

しかし、支援団体の実感調査では、7団体全てが「心身の病気やケガなどで働けなくなった」「精神障害や発達障害を抱えている」などを原因として挙げており、一般のイメージと支援の現場での実態には大きなギャップがあることが明らかになりました。

サンカクシャの若者が出場することになった背景

サンカクシャは、虐待などの影響により、親を頼れない15歳から25歳くらいまでの若者に対して「居場所」「住まい」「仕事」の3つのサポートを提供する団体です。住まいにつながる若者は、特に不安定な住居環境や経済的困難を抱えています。

2024年からのホームレス・ワールドカップの参加資格に合致した若者のうち、選考会を通過した2人が日本代表として選ばれました。

[Photo by Fu Chatani]
[Photo by Fu Chatani]

出場する若者たちの紹介

2人のインタビュー記事が、LIFULL STORIES(※)「特集 住まいと居場所 -ホームレス・ワールドカップによせて-」に掲載されました。
※「LIFULL STORIES」は、株式会社LIFULLが「しなきゃ、なんてない」をキャッチフレーズに運営する、既成概念にとらわれない多様な暮らし・人生を応援するメディア。

ぜひこちらの記事からお読みください。
https://www.sankakusha.or.jp/magazine/20241012/

今後の展望

ダイバーシティサッカー協会の代表理事である鈴木直文さんは、調査結果を踏まえて次のように述べています。「自分自身がホームレス状態になる可能性があると思うという回答が1/3を超えたことには、危機感を覚えます。特に20代では半数近くがそうした不安を抱えており、6人から7人に一人が『十分あると思う』と答えています。」

さらに鈴木さんは、「今回のホームレス・ワールドカップ日本代表には、路上生活未満の多様な不安定居住状態にあったり、そういう状態を過去1年の間に経験した人などが選ばれています。代表派遣を通じて広義のホームレス問題への理解が広がり、それに対する支援が行き届くようになれば、多くの『普通の人たち』の生活不安を拭うことにもつながるでしょう。」と期待を寄せています。

引用:https://lifull.com/news/35050/

結び

ホームレス問題は、決して他人事ではありません。調査結果が示すように、多くの人々、特に若い世代が将来的にホームレス状態となる可能性があると感じています。

そうしたなか、ホームレス・ワールドカップを通じて、「ホームレス」という言葉の背後にある多様な人生と可能性に目を向けてみていただければ幸いです。

ホームレス問題の解決には、政府、企業、NPO、そして一人一人の協力が不可欠です。この記事を通じて、多くの方がホームレス問題について考えるきっかけとなれば幸いです。

ホームレス・ワールドカップに出場した選手たち、そして来年以降、出場する選手たちへの温かいご応援をお願い申し上げます。


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