特集・企画
2024.11.25
大人の無意識の期待に応える若者たち。関わりの難しさと活動で得た学びとは【オトナリサンインタビュー】
サンカクシャでは、ご寄付やボランティアなどで一緒に若者を応援してくださっている方々を「オトナリサン」と呼んでいます。今回は、オトナリサンの小島孝之さん(以下:小島さん)をお招きし、インタビューを行いました。
小島さんは記者でありながら、取材以外の形でもサンカクシャの活動に参加し、若者と時間をともにしてくれました。関わり方への葛藤も含めて、小島さんから見た若者たちの姿について話を聞きました。
フィリピンの若者と自分の違いは所得格差だけだった
―――サンカクシャを知ったきっかけを教えてください。
小島さん)私は記者をしているのですが、サンカクシャに出会った当時は担当分野がない記者で、自分で取材テーマを探す必要があったんです。偶然、「若者の貧困と居住支援」をテーマにした研修シンポジウムに足を運んだ時に、代表の荒井さんの講演を聞いたことがきっかけで、サンカクシャを知りました。
「こうあるべき」という姿を重視するのではなく、若者の意思や自由さを重視していることや、若者全員が今の企業社会でうまくいくわけではないと話していることを聞いて、興味深いなと感じました。
自分の大学時代には、自己責任論の風潮が強く、当時から疑問に感じていました。個人の能力を伸ばしていくことは大切だけれど、一人で社会を生きていけるわけでもないと思っていたこともあり、サンカクシャの活動に参加してみることにしました。
―――自己責任論への疑問を持ち始めたきっかけはありますか?
小島さん)大学時代に、フィリピンのスラム街にスタディーツアーに行ったんです。ボランティアをするのではなく、ただその場に身を置くという内容でした。現地の同年代の若者に出会った時、自分とほぼ変わらないと感じました。現地には、3年間、毎年足を運んだのですが、前年に仲良くなった若者に翌年は会えなかったこともありました。将来の夢を熱く語っていた若者が、翌年には麻薬の売人になっているとか。
現地の若者と自分の間にあった違いは、所得格差だけでした。犯罪に手を染めないと生きていけない環境だった人に、犯罪だけに焦点を当てて批判しても意味がないと感じたんです。目に見えるのは、個人の一部だけだからこそ、その一部を見て全てを決めつけることに違和感や疑問を抱くようになりました。
一人の人として若者と関わることを体感
―――環境は違えど、現地に足を運んでみたら、自分とは変わらない一人の人が目の前にいたということなんですね。実際にサンカクシャの活動に参加された時には、どのように感じましたか?
小島さん)いろいろな背景のある若者がいると考え、スタッフの方に「どう接したらいいですか?」と尋ねたら、「自由にお願いします」と言われたことが印象的で。不安ながらも、一緒にゲームをしたことを覚えています。
突然、知らない人から「話を聞かせて」と言われても抵抗感があるのではないかと思い、若者たちへの取材はせず、ただ一緒にゲームをするだけの時間を2〜3ヶ月過ごしました。
まずはサンカクキチ(若者の居場所)の雰囲気を体感したかったということも理由です。スタッフのみなさんが「あ、いるな〜」くらいの温度感で、僕に構いすぎず、お客さん扱いしないところが好きでしたね(笑)
小島さん)サンカクキチでは、いろいろな若者が思い思いに時間を過ごしていて。人と話すことが苦手そうな若者もいれば、自分に注目してほしそうな若者もいて、人それぞれ状況が違うからこそ、画一化された対応は難しいんだろうなと感じました。
サンカクキチ以外にも、仕事体験のサンカククエストにも参加しました。若者と一緒に軽作業をしたのですが、楽しかったですね。
若者3人と僕で、どうやったら早く作れるかを話しているうちに、将来の話になることもあって。ふとした時に若者の人柄が見える瞬間があるんですよね。
ざっくばらんに話しながら、一緒に作業をしているからこそ見えてきたものだと思うので、サンカクシャで大切にしている「一人の人として関わる」というのはこういうことなんだなと体感しました。
仲良くなった若者のアルバイト先のカフェにお客さんとして遊びに行ったこともありました。その時は、コーヒーをおごってほしそうだったので、コーヒーをおごりましたね(笑)
大人の無意識の期待に応える若者たち
―――サンカクシャで大切にしている、一人の人として若者と向き合うことを体現されていらっしゃると感じました。私は過去に広報の仕事をしていたことがあるのですが、取材以外でじっくり活動に参加されている記者さんを見たのは小島さんが初めてです!
サンカクシャの活動の中では、オトナリサンとして若者と時間をともにされていましたが、本職の記者として若者を取材されたこともありましたよね。その時はどのように感じましたか?
小島さん)記者として取材をしていない場面でも、ずっと一緒にゲームをしていると「昨日、通院してて」というようにプライベートな話が出てくるようになり、一見、普通のように見える若者たちが抱えているものが少しずつ見えてくることもありました。
きっと尋ねれば、もっと深く自分のことを話してくれるかもしれないけれど、話すかどうかは本人が選ぶことなので、どこまで深掘りするかは記者としての葛藤でした。
小島さん)サンカクシャが運営しているシェアハウスに住んでいた若者に取材をしたことがあって。その若者は「人が怖いんです」と言っていたのですが、本当に人が怖いのかな?と疑問に思うくらいに、受け答えがきちんとしていました。
話を聞く中で、その若者に限らずですが、若者たちが大人の期待に応えようとしているのではないかと感じたんです。サンカクキチに滞在している時に、ほかの記者さんの取材が入ったことがあって。僕が取材した若者が取材に応えている様子を客観的に見て、ああ、やっぱりそうだよなと。
記者の仕事は、印象に残る言葉やきれいな締めくくり方を求めやすい仕事だと思います。
若者たちがそれらの期待に応えようとするように見えて、本人のために良くないなと感じたんです。自分の本音が出せなかったり、分からなかったりする中で、外発的な理由で無理に良いことを言おうとすると、本人の中で混乱してしまうのではないかと感じました。
タイパやコスパとかけ離れた活動の大切さ
―――若者との関わりや取材の中で気づいたことや学んだことはありますか?
小島さん)若者との関わりを通じて、人間は複雑なものだということに改めて気づけました。単純に決めつけないことの大切さを学びましたね。誰しもが、この人はこういう人だろうと決めつけながら生きている部分はありますが、自分の見えている世界の狭さに自覚的になった気がします。
若者よりも自分の方が長く生きている分、アドバイスをしてしまいたくなる場面もありました。若者と時間をともにする中で気づいたのは、今までの生い立ちの中でいろいろなことを言われてきているからこそ、言葉としてのアドバイスは重要ではないということでした。
サンカクシャの取り組みのように、若者と一緒に遊びに行くのって、すごくいいですよね。タイパやコスパとはかけ離れた活動こそが大切なんだとサンカクシャを通じて学びました。
いろいろな活動に参加する度に、サンカクシャの活動は良い活動だなと思いますし、自分が出会った若者たちが今後どのような人生を歩んでいくのかにも関心がありますね。
若者に従来の働き方と違う選択肢を
―――今後、サンカクシャでは、はたらくことに特化した拠点「サンカクオフィス」を開設します。サンカクオフィスに期待することがあれば、教えてください。
小島さん)地域の人や経済界の人など、いろいろな価値観の人たちと分け隔てなく連携していってほしいですね。
自分を丸ごと肯定してくれる居場所が大切な一方で、社会で生きていくためにはお金も必要になってきて、そのバランスが難しいんだろうなと感じています。
つらい思いをしている若者たちに、従来の働き方とは違う、若者たちに合う働き方を提示してもらえるといいなと思っています。
これからもいろいろな若者たちの居場所になり続けてほしいです。
―――たしかに新しい働く場を作っても、それが社会と同じ構造になっていたら、生きづらさが消えていかないですもんね。若者一人ひとりに合う働き方を模索していきたいです。今日は本当にありがとうございました。
現在、サンカクシャでは、「特定の場所に通って働くことが今この瞬間には難しいけれど、サンカクシャのスタッフとであれば一緒に働ける」という若者に対して、サンカクシャで仕事を受注し、スタッフと一緒に働けるようにしたいと考えています。そこで、サンカクシャに仕事を発注いただける企業・個人の方を募集しています。
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ライター
菊川恵
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2024.11.25